「さっ、ひばり――還ろう――」


りおんは、ひばりの腕を力強く握り、言った――。



「大丈夫、死にはしないよ――戻って来なかったら、リンスとキャシーはその程度のモブキャラだったって事で――」


そう言われ、ようやく「呪縛」から解かれたひばりは、麗しい眼差しでりおんに従った――。




昼休み終了、30秒前までに急いで教室に戻り、汗を拭き、髪と制服を整え、着席するりおんとひばり――。


私欲に興じていたクラスメイト達は、りおんの暴挙など知りませんと言わんばかりの面持ちで、とっくに「可愛い」少女を演じている――。


その演じ手の中に、リンスロットとキャサリンの姿はない――。


この日の午後イチは鏡花の授業――。


時間に厳しい鏡花の授業に、「遅刻」は許されない――。


故に、「女達」は状況、人によって幾つもの顔と仕草を用意する――「ゆるい」日本以外で生まれ育った彼女達は、りおんやひばりに比べればその「引き出し」は多彩だ――。


あどけないとされる少女の魂は、大人が思うより狡く、巧妙であり、愛しさに溢れ、残酷――。


幼さ故に揺れる心が、利用されもするし、その逆に罠を仕掛けもする――。


更にこのクラスの少女達には、「魔法」という非現実性質が加わり、背徳的な少女の在り方を歪ませる――。