「りおんちゃんの、もうひとつの愛称だろうがよっ――」
荒々しい月下美人――。
「月下さん、そんなに捲し立てても――あの、つまりねりおんさん、まさか初陣で許可もなくスペースデブリを全て片付けてしまって――」
「それで、愛称がつけられたの――これって、誰でも得られるものじゃないんですよ――」
りおんの「所業」を上品な表現に変換し、愛称を与えられる「名誉」をひばりは説く――。
「うぅん、微妙――」
ひばりが言う程、得した気分になれないりおんは、眉をひきつらせ、呟く――。
「あなた達、何をなさっているの――早く上がって来なさい――」
姿は見えないのに、リンスロットの声だけが急かし、届く――。
「とりあえず、急ぎましょうか――」
「わかったよ、ひばり様――んじゃ、ステッキさん――」
「うむ――」
胸元のポケットからステッキさんを取り出し、標準化させるりおん――。
「ほんじゃぁ、飛行魔法起動――」
りおんの体が浮き、柔らかく加速し、先行するひばりを追う――。
「その声――聞き覚えがあるなぁ――」
月下美人が、過去の景色を懐かしむ様に言った――。