たったひとつ交わした「想い」で、十分だった――。
「それにしても、ひばり様も通だよね――結構マイナーなネタだよっ――」
「そうよね――全国放送には至らなくて、一部の地域の人しか知らないマニアックな作品ね――」
「ふふっ、でもりおんさんの狼狽ぶりは、私のツボにはまったわ――」
「ひばり様の指示を見た時は、凍りついたよ――ひばり様が本当に全中裏の総帥でドレスを纏い、お人形を小脇に抱え病弱な表情でわたしを蔑んで、蘭塾送りにされるかと思うと、冷や汗と別の成分の液体が滲み出るところだったよぅ――」
「りおん組――見参っ――」
「って、啖呵を切る寸前だったよ――危ない危ないっ――」
気持ちが高揚し、捲し立て気味に喋るりおんを、ひばりは羨ましく「眺めた」――。
りおんの様に、屈託なく自身を開放できていれば、違う景色、違う友――違う人生が「用意」されていたのかもしれない――。
が、ひばりは「わかっている」――真の自分を表現し、想いを解き放てるのは他の誰でもない、自分自身しかいないのだと――。
りおんは、きっかけに過ぎない――。
過ぎないが、自分が敷いた訳でもないレールをトレースするひばりにとっては、魂を揺さぶる程の強いきっかけ――。