ひばりは、悪戯っぽく口に手をあててはにかむと、りおんの身を起こし椅子に座らせ、机を並べ直し、何事もなかった様に自身も定位置に就き、教室を見回して「ざわつき」を静めた――。
「な、なぁんだぁネタかぁ――まさかひばり様から繰り出されるなんて思わなかったよぅ――」
「ひばり――で食いついてくる人って、今までいなくて寂しかったのよ――このクラスだと尚更に――」
悲しげに視線を落とすひばり――。
「ひばり様――」
「でも、りおんさんは違った――ちょっとマイナーなネタをちゃんと知っていた――そして私にぶつけた――」
「霧が晴れた――私の前に明るい世界が広がった――りおんさんのお陰ね――同じ世界を共有する友を得た――嬉しい――」
落とした視線を未来に向け、頬を赤らめ、ひばりは悦びの感情を紡いだ――。
古風な容姿、丁寧な言葉遣い、厳格かつ物静かな趣を「強要」する家業――。
規定路線を外れた趣味を心の内に閉じ込め、ふさわしい「役割」を演じるひばりの前に現れたりおん――。
りおんは、ひばりに福音をもたらした――。
心の内に封印していた「想い」を解き放てる友を得た――。