呼び名は様々だった――。
奇跡の石――。
悪魔の石――。
繁栄の石――。
いつ発見されたのかは定かではない――。
唯一、南極で最初の発見が確認された以外、詳細は不明――。
そこに、魔法元老院の介在を匂わせて――。
表歴史から分岐した「裏歴史」が刻まれてゆく――。
黒く輝く鉱脈を、人々は貪った――。
地理的特徴故に、発掘は困難を極めた――。
その埋蔵量は、現在に至っても僅かに残っているとされ、魔法評議院が管理し、採掘を制限、事実上魔法鉱石を独占している――。
対抗する様に各国が南極に「基地」を構え「不測」の事態に備え、凡人達を欺く――。
同時進行で各国はそれぞれの国土、海域で魔法鉱石の鉱脈を調査、試堀を独自に進めるが、鉱脈を発見したという報告はない――。
報告はない――当然だ――。
自慢気に魔法鉱石を発見したなどと吹聴する「おめでたい」国はない――。
発見したとしても、その事実は深く静かに闇に沈む――。
魔法鉱石の発見、発掘は国家戦略において最高機密であり、最も有効な手札であり、核兵器などという子供じみた「おもちゃ」とは効力の次元が違う――。