故に不幸、不遇オーラが彼女を取り巻き、男達は無意識的にエレノアから離れてゆく――。


エレノアの「思惑通り」の景色は、時に同性からは反感を買う危険を孕む――。


買うか買わないかの境界線で上手くバランスを保ち、エレノアの自我は「透明」に近づく――。


「すみません、少し話が脱線してしまいましたね――」


「は、はぁ――」


「でも私はリンスロットにはもっと自由に振る舞って欲しいのです――ロナール家や不出来な姉の呪縛から解き放たれて――」


「あのうエレノア先生――呪縛とか縛られるとか――先生の過去に何かあったんですか――」


それは、りおんの「小さな」疑問に過ぎなかったが、確信を突かれたエレノアの表情は曇り、一瞬視線をりおんから外す――。


「――――今は話せません――」


「あっ、いえ――立ち入った事を聞いてすみません――」


「決心がついたら、きちんとお話します――」


そらした視線をりおんに向け、控えた声でエレノアは言う――。


りおんには、エレノアの目と意思が、自分を通り越して背後に佇む存在し得ない「何か」に彼女自身の全てを、眼差しと声に託している様に見え、思えた――。


故に「真意」をエレノアに問おうとは思わなかった――。