そして9月も最終日――。


クラスを代表して、りおんとひばりは、千羽鶴と寄せ書きを携え、鏡花の自宅を訪ねた――。


「いらっしゃい――」


既に「母親」を彷彿とさせる風格で二人を迎える鏡花――。


強引とも思えるエレノアの「割り込み」にも、わかっていたかの様に笑顔で包み、相応の仕草を施す――。


エレノアの背後で蠢く思惑を、その仕草にさらりと滲ませて――。


千羽鶴と寄せ書きを渡した鏡花の反応は、りおん達の予想を遥か上をゆく「少女」の悦びを惜し気もなく振りまいたものだった――。


普段のちょっと厳しい鏡花の趣とは異なる表現――透明な「純水」が彼女の瞳を潤わせている景色をりおんは眺め、母親になろうとする鏡花を魂が羨む――。


鏡花手作りのシフォンケーキを堪能しながら、話に花が咲く――。


更に大きくなったお腹を交互に擦り、手のひらから伝わる新たな命の鼓動を躰に染み込ませるりおんとひばり――。




「色々納得できない事はあるでしょうが、エレノアさんを悪く言わないでね――」


帰り際、鏡花は二人にお願い事をする様な眼差しで言った――。


事実、エレノアに対するクラスの感情は割れている――。