「御姉様、そういう事ではなくて、鏡花は――」
「リンスロットさん――」
エレノアがリンスロットの「稚拙」な言葉綴りを強い口調で遮り、続けた――。
「鏡花さんの事は、先程私が説明した通りです――これ以上の詮索は不要です――」
「――――」
「しかし、なっていませんね――目上の人に対し、呼び捨てとは――女としての品位が問われます――」
「ですが御姉様――」
「リンスロットさん――たとえ姉妹でも、公の場での言葉遣いと選択はわきまえて下さい――」
強い意志で、エレノアはリンスロットをたしなめる――。
「申し訳ありません――――エレノア先生――」
少女が大人に従い、着席した――。
姉妹の「厳しい」会話に、教室内の空気は冷え、少女達の魂と躰を硬直させる――。
「では、出席を確認します――」
所詮、妹は妹――姉には逆らえず「立場」の差は歴然――。
特に、ロナール家のそれは突出し「厳格」――。
言い様のない「想い」を力を込めた両拳に集約し、下唇を噛んで俯き加減のリンスロットに、圧倒的な姉の威厳を見せつけたエレノアは瞬間、妹を可愛がる瞳を伺わせ、その一切をもなかったかの様に少女達の名前を呼んでゆく――。