「はぁ、なんか無駄な電力を消費している様な――」
悶々と言い、オーディオシステムの電源を落とすと、りおんはバルコニーに通じる窓を開けた――。
部屋の外に出たりおんの頬に、高層階特有の冷たく勢いのある風が「刺さる」――。
手摺に頬杖をつき、りおんは青白く輝く満月にぽつりと呟く――。
「今日も誰かが、戦っているのかな――」
「私の知る限り、ダークエネルギーの接近は確認されていないぞ――」
ステッキさんが「黄昏る」りおんの背後で淡々と言う――。
「こういう時は、そうだな――ってさりげなく曖昧な台詞で纏めてよ――」
「すまんな――不器用なもので――」
「にしても、月って綺麗で神秘的で、怖いよね――わかっている様で、何もわかっていない――こんなに近くにいるのに、果てしなく遠い存在にも思える、不思議な星――」
「そうだな――」
「ふふっ、ここでその台詞なんだ――」
満月を映すりおんの瞳が、笑う――。
その時、机の上で充電中だったスマホが、ヴィーラヴの新曲「好きなんかじゃない――愛してる」のメロディーを奏でる――。
「アリスからメールだっ――」
部屋に戻り、スマホを取ったりおんは、マットレスに寝転がりながらメール内容を確認する――。
画面には、ヴィーラヴメンバーとマネージャーとおぼしき綺麗な女性が笑顔で映り、真ん中のアリスは、あのスイーツを手に微笑み、りおんを「罠」にかける――。
「今度、遊びに来てね――」
完璧なアリスの文面――。
返信に「狂じる」りおん――。
頬を刺していた風が、カーテンを揺らす――。
りおんに安堵したステッキさんはバルコニーで宙に浮き、りおんに代わって妖しく輝き、佇む満月を「意味深」に眺めた――。