「じゃあ私そろそろ行くわね?
向こうでの挨拶も済ませないといけないから…」
「はい、分かりました!」
「直人の事は直人自身でやらせてね?力仕事とかもバンバンやらせていいのよ?
一応、一通りの家事は仕込んであるから!」
「あはは。仕込むなんて~…」
何かサーカスみたいに聞こえるなぁ。
「直人!美桜ちゃんに迷惑かけないようにね?」
「…分かってるよ」
「なら宜しい!」
そう言って直人ママは大きなキャリーケースを二つ、車に積み込んだ。
結構重そうなのに…軽々と凄いなぁ。
あの華奢な身体のどこにそんな力が…
「美桜ちゃん」
「はい?」
「直人の事、よろしくお願いします」
いつもの穏やかな感じとは違う、凛とした口調。
聞いてくるこっちまで背筋が伸びてしまうような…
「そんな…こ、こちらこそ、よろしくお願いします」
ガバッと勢いよく頭を下げた。
こういう時、なんて返したらいいのか分からなかった。