「ただいまー」



家の中で私だけの声が虚しく響く。



返事なんてあるはずもなく…もしあるとしたら警察に通報レベルの話だ。



私のお母さんは海外を飛び回るデザイナー。だから日本に帰ってきてもすぐにまた外国へ行っちゃう。



あんまりにも海外へ行くものだから、支部の近くに部屋を借りているんだって!
それにそれは一つとかじゃないらしく…



まぁ小学生の高学年…位からそんな生活が増えていったから、もう慣れたんだけどね?



ん、お父さんはって?
…父は私が小さい頃に亡くなって。
だからお父さんとの思い出は少ない…



でも、大きな手で頭を撫でられた時のあのぽかぽかした気持ち。
これは今でもはっきりと覚えてる。
私の…大切な思い出のひとつ。


靴を脱いで自分の部屋に行くと、ささっと部屋着に着替えてベッドに突っ伏す。



今日の夕食どうしよーとか、夜遅くなるまでに掃除機ちょっとかけとこうかとか考えながらも…浮かんでくるのは、大和の告白…



告白する時の真剣な表情。
『好きだ』と私に告げてきて…



思い出す度にドキドキしながらも、胸がズキッと痛んだ。



だって…花音が恋い焦がれている相手は…



他でもない、大和だから。