「松田、瞬…っ」
抑えてきた手を振りほどくと、勢いよく後ろにいた松田くんを睨み付けた。
力だか何だか知らないけど…
花音を振り回したひどい野郎に変わりはない!
花音の敵は私の敵、である。
「美桜が呼び捨てなんて珍しいねぇ?
いつもみたいに“松田くん”って呼んで欲しいんだけど」
「お断りします!」
こうなれば、微笑みかけてくる笑顔でさえも嘘くさい。
自分の感じてた違和感がはっきり分かった今、警戒心がより強くなる。
「残念。
それよりさ、今日の放課後空いてる?
終業式の後に…音楽準備室に来てもらいたいんだよね」
「私が…行くとでも思ってるの?」
何を言っても表情ひとつ変えない松田くん。
そこに感情というものを感じられなくて…
その姿に、恐怖すら覚える。
「別に来ないなら構わないよ。
ただ……花音ちゃんはもっと酷い目に遭う事になるけど」