直人は何も言わずに、早歩きで歩いていく。
でも何か、背中から怒りが伝わってくるような…そんな感じがした。
「さ、さようなら!」
慌てて会長の方へ首を捻らせて一言挨拶をすると、ペースを合わせる為に私も早めに歩く。
するとそんなに長くない廊下なので、角を曲がると会長の姿はすぐに見えなくなった。
「眞中美桜、ねぇ…気に入った」
一人になった廊下でほくそ笑む帝。
その呟きは、誰に聞かれることもなく静寂の中へと溶けていった…
黙々と歩いていた直人だったけど、階段の踊り場に着くと足を止める。
「わぶっ!」
それが突然止まったんで背中に顔が接触してしまった。
「お前さ…」
「んー?」
「無防備すぎるんだよ」
訳が分からずに私は首を捻る。
そうしたら、何故か奴にため息を吐かれた。