「まぁ、別にどうだっていいですけどね…今日こいつは『俺と』先約があるんで。なぁ?」
「う、うん…」
言ってることは確かに間違ってはない。
間違ってないんだけど…何故だろう?
違うニュアンスに感じてしまうのは…
「それじゃ失礼しますね?羽山先輩」
「えっ、あ、直人!?」
意味深な笑顔を一瞬生徒会長にしたかと思えば、ぐいっと直人に手首を引かれる私。
『抵抗』という単語が浮かぶ余地もないままに歩を進めはじめると…
「君たちは付き合っているのかい?」
「ないです。事実無根です!」
少し大きめの声で聞いてきたその問いに、私は瞬時に否定をした。
変な噂が流れると、困るのは他でもない…直人だから。
「そうか。なら僕にもまだ入り込む隙はあるってことだね?」
会長の言葉を聞いて、私の手首を掴む力が少しだけ強まった気がした。