(2)はじまりは制裁のキス
あたし崎谷仁香と水原渚は、ちょっと前まではただのクラスメイトだった。
渚は入学式のときから目立っていた、すごく見た目にわかりやすいイケメンで。
顔は整っているけど、世の中を馬鹿にしたような冷めきった目をしてて、それが「クール」だなんて騒がれてた。
渚を見てきゃあきゃあ言ってる女子たちは馬鹿みたいだったけど、渚は男子に興味のないあたしの目から見てもたしかにイケメンだった。
男っぽいけど泥臭い感じじゃなくて。背が高くて腰の位置高くて、ぱっと見爽やか。
だけど目が強くて、いかにも肉食って感じ。
クラスでいちばん目立つイケメンだらけのグループの、さらにその中心にいる王様みたいなやつ。
あたしはその真逆。
休み時間は教科書か文庫本広げてて、他の女の子たちみたいにグループでつるんだり、おしゃれしたりしない。
顔が半分隠れるくらい長い前髪、伸ばしっぱなしの髪はいつもひとつ結びにしてて、フレームのデカいメガネも標準装備。
陰で「根暗ぼっち」なんて呼ばれてるようなダサいヤツ。
そんなあたしに正面きって声を掛けてきたのが渚だった。
「おいブス。てめぇが崎谷か」