「やっべ。もう時間」
渚が着信のあったスマホを見て声を上げた。
「渚、今日デートだっけ?リア先輩と」
「うらやまし?ってかおまえもさっさと彼氏作れば?」
同じテンションで馬鹿やってることがたのしいだけで、あたしは渚を、渚はあたしを、好きなわけじゃない。
恋人同士じゃない関係でするキスが、ただ今はたのしいだけ。
「は?彼氏とかいらねーし。渚こそこんな馬鹿なことしてないで、さっさとリア先輩のとこ行けば?せいぜいフラれないようにね」
「は。さびしいくせに。おまえ俺にかまってもらわなきゃ、この後また『ぼっち』なんだろ、どうせ」
「なにそれ。遠まわしにあたしに引き止められたがってるわけ?うっざ」
あえてこんな憎まれ口を叩き合うのもお互い了解済み。
だからわたしも渚もムカつかないで笑ってる。
「何言ってんの?ありねえわ。おまえこそまだ俺といたいんだろ」
「自意識過剰?ありえねえし」
汚い言葉で言い合って、おかしくなってまた2人して馬鹿みたいに笑う。