「お願い渚。………本当のことを言って……?アキちゃんにやられたんじゃないの……?」
「何泣きそうになってんだよ。だから違うっつってんだろ。だいたい一対一のボコり合いになったとしたって、この俺があんな変態インテリ野郎に負けるわきゃねーだろが」
「………じゃあこのケガ、どうしたの?」
たずねた途端、渚は決まりが悪そうな顔をして口を一文字にしてしまう。
「ねえ……本当にどうしたの?渚みたいな男がここまで一方的にボコボコにされるなんて普通じゃないよ……っ」
「はあ?全然一方的じゃねぇし」
渚がむっとしたように言うと、渚に肩を貸して抱えていた七瀬由太が呆れるようにおおきなため息をついた。
「つまらない見栄張らないの。渚、おまえ自分が思っている以上に今のおまえはボロボロのボコボコだよ」
「由太、おまえまで何言ってんだよッ。俺がやられっぱなしだったって言うのかよッ」
渚は噛みつかんばかりの勢いで七瀬に突っかかるけれど、付き合いの長い七瀬はビビる様子もなく澄ました顔で言い返した。
「うん、そう。ズタボロにされた挙句、最後は床に張っ倒されてKOされたじゃない?……崎谷さんの前で恰好つけたいのも分かるけど、どんなに強がったって痛いの堪えて平気そうな顔したって意味ないよ。だって渚と違って向こうはほぼ無傷だったじゃない?向こうの圧勝だったよ。渚は完敗。今日のところは渚はただの負け犬だよ」
冷静に分析する七瀬の言葉にチッと舌打ちすると、渚はそれから黙り込んでしまう。
「七瀬くん。ねえ、完敗って何?まさか渚、誰かと殴り合いの喧嘩でもしてきたの?」
あたしが詰め寄ると、七瀬は困って目を逸らした。