「………やめなよ。あたしの口、ゲロの味するかもよ?」
あたしが身を引いても、渚はやめるどころかますますあたしに詰め寄ってくる。
「ある意味最高に刺激的じゃね?一生のうちで1回経験するかしないかだろ、ゲロ味のキスとか最低すぎて」
「変態?渚って、ほんと」
憎まれ口を叩こうとするくちびるを、くちびるでふさがれる。
渚はあたしの舌までやさしく吸ってくれる。
------なにこいつ。
悪いけどあたしは渚がゲロした後はキスしたくないし、ベロチューなんて勘弁なのに。なんで渚はキスしてくれるんだろ。なんで舌まで欲しがってくれるんだろ。
こいつ変態。変態的にやさしい。
そのやさしさに、あたしは溶かされそうになる。
----やばい。ほんと、もう渚とはキスしないほうがいいのかもしれない。
『渚になりたい』って、無意識に抱いていた渚への漠然とした『憧れ』。でもそれが、あたしの中でいつのまにか違う感情に変わろうとしている。
あまりに心地よくて、甘くて。あたしはこの感情が手放せなくなりそうで。どうしてなのか目頭が熱くなってじんじんしてくる。