独りでいても平気なクセに、馬鹿にされた友達のためなら本気で怒って殴り込みをかけてくるような。気負いなく困ってる相手に手を差し伸べておいて、『自分は全然たいしたことなんてしてない』って笑顔で言いきれるような。


熱くて、強くて、それと同じくらいやさしい人。


それは、あたしがなりたくてなれなかったあたし。


あたしはずっと、非力でずるくて弱くてみっともない女の子なんかじゃなくて、渚みたいな堂々とした男になりたかったんだ。




-----あたしはずっと、渚に憧れていたんだ。




七瀬由太や他の男子たちみたいに渚と肩を並べて、あたしは渚と友達になりたかったんだ。たぶんキスフレンドなんかになるよりも前から、あたしは渚の仲間になりたかったんだ……。




「崎谷?どうかしたか?」


あたしはあたしの中にずっとあった感情をはじめて悟って、なんだか感極まったときのように涙ぐみそうになっていた。


「……ううん。ほんとに、ありがとう渚」


あたしにやさしくしてくれて、ありがとう。あたしのことを、仲間のひとりのように扱ってくれてありがとう。そんなお礼の言葉を胸の中で繰り返していると、なぜか渚はひどく微妙な表情になってしまう。



「そんな感謝されると、ちょい気まずいんだけど」

「……なんで?」

「こっちも役得っつうか……あったからな……」


渚はらしくもなく、言葉を濁す。