いいえ、もう京なんて内心でも呼んじゃいけない。


わたしは京……相良先生の視線を感じて顔を上げた。


「すいません、眠ってしまいました」


慌てて体を起こすと、膝にバサリと布の感触がして目を落とせば。相良先生が着てたコートがいつの間にか体に掛けられていたのだと知った。


わたしが風邪引かないように、配慮してくれたんだ。


わたしは温かい気持ちと同時に切なくなって見えないようにぎゅっとコートを握り込んだ。


もうサヨナラなのに……そんなに優しくしないで。


気持ちが揺れてしまうから。