「にしても遠いねェ………」


「あなたが言い出したんでしょうが……!」



引きずるようにして教室を出たわたしたちは、約束通り(脅迫に近いけど)裏山の長い石段を登っていた。



「まあまあ、そんな神木ちゃんには教えてあげるよ」



いつの間にか、神木ちゃんになってるし………
自由奔放な西村さんには何を言っても無駄だとこの数時間で学んだ。





「わたしね、好きな人がいるんだー」



「……だろうね。だからこうして頼みに行くんでしょ」



「ははっ、そだったね」





(天然なのかな………)





「恋神さまにお祈りすると、恋を叶えてくれるって言ったじゃん?恋神さまには、いろいろな噂があるんだよ」



「噂………?」




「恋神さまは、」






____ザァァアア





「うわっ」



西村さんが、ゆっくりと口を開いた刹那
突風がその先を遮るように吹いた。思わず手をかざして、目を細めると、先程までなかった鳥居とその先に境内が見えた。