「……花南さん、あのさ」
「ん?」
呼ばれて暁くんのほうを見上げた瞬間、暁くんの顔が近づいてきたかと思うと、やわらかなものが唇に触れた。
「……っ、」
ぽかん、としてしまったわたしは、しかしキスされたのだと理解したとたんに、顔がどうしようもなく熱くなる。
ちょっと、なにこの反則的なふいうち…!
ほんの一瞬触れただけ。
それなのに動揺するほど心臓がドキドキしてしまう。
それほど人通りがないとはいえ、普通に周りに人がいるのに。
一瞬だったから、たぶん誰にも気づかれていないけど、こんなの、恥ずかしすぎる。
「すごい、暗くてもわかる。花南、顔まっか」
「あ、暁くんのバカ!こんなの、赤くなるに決まってるでしょっ!?」
しかもいきなり呼び捨てになってるし。
ドキドキしすきて胸が苦しい。
暁くん、わたしの心臓を壊してしまうつもりなんじゃないだろうか。
「ごめんごめん。……でも、これからこんな可愛いとこをたくさん独り占めできるなんて、幸せすぎてどうしよう」
「~~っ!」
いやいや、わたしのほうこそどうしよう、です。
暁くんがこんなに甘いことを言う人だったなんて、わたし、本気で心臓が耐えられるか心配になってきた。
「花南」
「は、はい」
「だいすきだよ」
そう言ってにっこり微笑む彼に、胸がきゅんと震えて。
わたしはまた、どうしようもなく惹かれていくの。
*END*