「よっし、行こう。腹減った!」

にこりと笑って、自然にわたしの手を取った暁くん。

そういえば、抱きしめられたことはあっても、こんなふうに手をつないで歩いたことはなかったなぁ、なんてぼんやり思う。

「そだ、あそこにしない?この前行った、多国籍料理のとこ」

そう言って、初めてふたりで行ったお店を提案してくれた暁くんに、迷わず賛成の声をあげた。

「いいね、美味しかったから、わたしもまた行きたいと思ってたんだ」

「じゃあ決まり!……ホントはさ、前にふたりで行ったときも、誘うのめちゃくちゃ緊張したんだよ。みんなで、っていうのが当たり前になってたから、いきなりふたりで誘ったら警戒されるかな、とか、すげー不安になってた」

並んで歩きながら、照れたように言った暁くん。

あのときは確かに、ふたりで、っていうのが信じられなくて、わたしも緊張してたなぁ、なんて思い出す。

「でも、やっぱり花南さんといると楽しくて。今までの関係壊すのが怖くて、みんなでしか誘えなかったけど、もっと早く勇気出せばよかったって思った」

「わたしも、暁くんといるときがいちばん楽しいし、幸せだよ」

長い間、わたしの心のなかで育ってきた気持ち。
こんなふうに言葉にできる日がくるなんて、夢みたいだ。