「……まだ桐原くんとの仲を疑ってるの?」
「そうじゃないよ。……ただ、仲がいいところを見ちゃうとどうしても嫉妬するっていうか……。ごめん、彼氏でもないのに勝手にこんなこと思って。嫌だよね」
もごもごとそんなことを言う暁くんは、本気で照れたように顔を赤くしているから、どうしようもなく胸が苦しくなった。きゅん、と強く疼いて、息ができないくらい苦しい。
なんだか歩くことさえままならなくなって、エントランスホールを抜けて外に出たところで、ついに立ち止まってしまった。
少し冷たい風が、ざわ、と街路樹の葉を揺らしている。
「腹へったし、とりあえずメシ行こう。どこがいいかな……、花南さん?」
思わず胸のあたりを押さえて立ち止まっていたわたしに気づき、数歩先で足を止め振り返った暁くんは、不思議そうな顔でわたしを見て、首をかしげた。
「……嫌じゃないよ」
「え?」
呟くようなわたしの声に、暁くんは反射的にだろう、疑問を返してくる。