だって暁くん、わたしの恋愛事情なんて今まで興味なかったでしょう?

わたしの彼氏の有無なんて気にされたことないもん。

それなのに飲みに行ったときには、そういう話もしたかった、とか言うし。

今は少し桐原くんと話しただけで、元カレなのか確認してくるし。

おまけに、笑い飛ばせばいいような勘違いに照れたように動揺してる。

そんなの、わたしだって戸惑う。
思い上がったことを考えてもいいのかなって勘違いしそうになっちゃうよ。


「……暁くんのバカ」

大事な彼女がいるくせに。
わたしのことなんて、ただの同僚としか思ってないくせに。

なのに、こんなふうに勘違いさせるなんてひどいよ。

今までどおり、彼女への愛でいっぱいの、隙のない暁くんでいてよ。

そうじゃなきゃ、わたしが困る。

言えない気持ちがあふれすぎて、つらいよ。

「花南さんにバカなんて言われるの初めてだ」

「……その言い方、ちょっとへんたいみたいだよ」

少し驚いたように変態ちっくなことを言った暁くんは、あははと軽やかな笑みを見せていて、なんだかすっかりいつも通りのようだった。

……わたしばっかりいつまでもドキドキして、わたしのほうがバカみたい。

暁くんの魔性ぶりにあきれて、わたしはひっそりため息をついた。