「いやでも、名前、呼び捨てで呼ばれてたよね？」
「そんなの大学生のころは特別でもなんでもなかったよ。彼女ひとすじの暁くんにはわかんないかもしれないけど！……だいたい、なんで元カレ？今じゃなくて？」
「だって今は彼氏いないってこの前言ってたから、今じゃないなら元かなって思ったんだけど……」
わたしの必死の剣幕に、どうやら元カレ疑惑は誤解だったと信じてくれたらしい暁くん。
わたしの問いに答えながら、勘違いしたことが恥ずかしくなったらしく、顔をそむけてしまった。
「……まじか」
ぽそっと呟いた一言に戸惑いの色がにじんでいて、訳もわからず胸がざわついた。
……本当に、もう。
暁くん、どうしちゃったの。
その戸惑いは、単純に自分の勘違いに対する恥ずかしさに対するもの？
それとも、桐原くんとわたしが付き合っていなかったことが、暁くんを動揺させてる？
少し前までのわたしなら、後者の選択肢を選ぶことなんて絶対になかった。
そんな考えが浮かんだ時点で、何思い上がってるのわたし、と自分自身を咎めていただろう。
……だけど、今のわたしにはそれができない。
