顔を上げると、わたしと同じように視線を外した暁くんがいた。

もしかして、暁くんも私と同じタイミングで気まずくなって視線を逸らしたのかな。

そんなことを思いながら黙って暁くんの言葉を待っていると、やがて意を決したようにわたしのほうに視線を戻した暁くんと再び目が合った。

なんていうか、こんなに言葉にするまで時間がかかるなんて、よっぽど言いにくいことなんだよね?

そう気づいたらむしろ聞くのが怖くなってしまった。

わたし、いったいなにを言われるんだろう。

なんだかこっちまで緊張してきてしまったけど今更聞かないなんてできないし。

あぁもう、わたしなにやらかした……!?

とひとり頭の中で焦っていたわたしだけど、暁くんの口から出てきたのは、意外な問いかけだった。

「こんなこと聞くのも野暮なんだけどさ。……さっきの男、花南さんの元カレかなにか?」

気まずそうな顔をしてそう聞いてきた暁くんの言葉が一瞬理解できなくて、ぽかんとしてしまう。

そしてただでさえ回転の遅い頭が、どうしてかいつも以上に時間をかけて、なんとか言葉の意味を飲み込む。

「……えっ!?」

そして理解したと同時に、びっくりして思わず声が出てしまった。

だって、どうしてそんな誤解をしてるの!?

暁くんが言ってるさっきの男、って桐原くんのことだよね?