「そっかー、俺たちももう後輩の前でアドバイスするような立場になったんだな」
課長のデスクから戻りながら、暁くんがしみじみ、といった口調で呟いたから、わたしも、そうだねぇ、なんて頷く。
右も左も分からない新入社員だったのがつい最近のように感じるけど。
いつの間にか3年目だなんて、月日が経つのは早いものだ。
営業部の中でもどんどん実績を積み上げている暁くんと比べたら、わたしなんてまだまだで、壁にぶつかることだって多いけれど。
それでも自分なりに頑張ってきたなぁ、と思わず笑みがこぼれた。
「何ひとりで笑ってんの?」
自分の椅子に座りながら感慨深い思いに浸っていると、向かいからからかうような声が聞こえてきて、わたしは慌てて笑みを消すと、「なんでもないよ」と誤魔化した。
ひとりで笑ってる変な女になってたね、今。
感情がすぐ顔に出ちゃう癖、なおさなきゃとは思うけどなかなか難しいな。
「来週の金曜か。そういえば、秋の新人研修って1週間なんだっけ」
おそらく課長からのメールを開いているのだろう暁くんが、カチカチとマウスの音を立てながら独り言のように呟いた。