だって、講師って。
わたしたちみたいな若い社員がやるような仕事なの?
口には出さなかったけれど、どうやらわたしの疑問は顔に出ていたらしい。
課長が小さく笑った。
「講師って言っても、今までの仕事の経験を2、3分新入社員の前で話して質問に答えるだけみたいだぞ。ふたりが研修を受けたときにもあったんじゃないのか、そういう時間」
パソコンの画面にはどうやら研修の資料が映っているらしく、それを見ながら課長が言った。
その言葉に、ああ、と思いあたる。
そういえばわたしの研修のときも、比較的歳の近そうな先輩社員のお話を聞いたり、質問するような時間があったっけ。
先輩の話はとてもためになったし、面白かったし。
他の研修の課目より肩の力を抜いて受けられたことを覚えている。
わたしのときはたしか、講師として呼ばれていた先輩は5人くらいいたんだよね。
今年も同じような流れだとすれば、わたしと暁くん以外にも同期の中には同じように講師を依頼されている人がいるのだろう。
「いい経験になるだろうし、しっかり準備して臨むんだぞ」
最後にパソコンのディスプレイから視線を離してわたしと暁くんを交互に見ながら言った課長の言葉に、わたしと暁くんは同時に、はい、と力強く返事を返した。