わたしだって、そう思うよ。

暁くんは誰にも壁を作らない人だけど、自分に好意を持ってくれる女の子には期待を持たせないように振舞っている。

わたしは絶対に自分の気持ちがばれないように気をつけていたつもりだから、たぶん警戒されてはいないんだろうけど。

そんなわたし相手でも、今までふたりでご飯に行くことさえしなかったんだよ。

暁くんはお酒の席でふざけて女子に触れるなんてもってのほか、思わせぶりな発言だって絶対にしなかった。

そんな暁くんが、急にハグしてくるなんて。

あんなこと、言ってくるなんて。

どう考えてもおかしい。


「花南のことを好きなんだとしか思えないんだけどなー」

「……でも暁くん、彼女いるでしょ」


だからこそ暁くんの行動に戸惑っているんだし、そもそも暁くんに彼女がいなかったら、わたしは自分の気持ちを抑えることなんてせずに、とっくに想いを告げていると思う。


「花南のことを好きになったから別れたのかもよー?」

「……そんな都合のいい展開がわたしに起こるなんてありえない」


あっけらかんとした由愛の言葉にため息交じりにそう答えて、わたしは自分のお弁当に箸を伸ばした。