さっきから、何度印刷をかけてもエラー表示が出る。

もう今日はできるだけ印刷しないようにしよう、なんて今更ながらに決意を固めた。


「夕方には業者の人が一応見にきてくれるらしいよ。いくらなんでも詰まりすぎだから」

「!」

ふいに後ろから声をかけられて、驚いて大仰に肩がびくりと跳ねる。

バッと後ろを振り返ると、同じ部署で同期の佐藤暁(さとう あき)の姿があった。


「暁くんか、びっくりした~!」

「え、そんなに?」

「だって全然気配なかったし」


あはは、と笑うと、暁くんは苦笑をこぼしていた。


「てか、俺も印刷したいんだけど」

「え、ゴメン、ちょっと待って。今高速でなおすから……、あつっ」


くるりと暁くんに背中を向け、奥の方に挟まったままの用紙をとろうと手を伸ばした拍子に、熱くなっていた部品に触れてしまったようで、短い悲鳴と共に慌てて手を引っ込めた。


「大丈夫?」


心配そうな顔で私の手に視線を落とした暁くんに、わたしは「全然大丈夫」と笑った。

よくあることだし!


「いいよ。俺がやるからちょっとどいて」

「え、でも」

「いいから」

ずいっと半ば無理やりわたしを押しのけてプリンターの中に手を突っ込んだ暁くんは、「おー、これはなかなか頑固に挟まってんな」と眉をひそめた。