扉を開けると美味しそうな匂いがしてきた
「オッサン!!」
「おお!晴じゃねえか!!」
「うっす!!いつもの2つ!!」
「2つ??…おお!!おっけー!!」
「梓もオッサン特性のスペシャルラーメンでいい?」
「あ、うん」
穴がどこそこ空いていて中には落書きもされてるボロボロの壁
床はラーメンの汁とかでシミだらけ
でも、嫌な気はしない
むしろ、心の底から安心出来る場所だ
「あいよ!!スペシャルラーメン2つだよ」
「ありがとうございます」
「おー!!うまそうだな!!いっただっきまーす!!」
「いただきます」
美味しい
こんなの食べてたらお兄ちゃんのこと思い出す
お兄ちゃん、ラーメン大好きだった
特に××食堂のラーメンが…
「おい」
「へッッ?!」
「泣いてるのか?」
「え??」
慌てて自分の頬に手を当てると涙がついた。
「あ、れ…??なんで泣いてんだろ。いや、泣いてないんだよ!!多分あくびが出ててそのまんまだったのかも…」
「んなわけねえだろ」
「ッッ…」
また、真剣な表情…
「オッサン、今度まとめて金払う。今日はごめん」
「おーう!!わかった」
「…梓、こい」
「…やだ」
「じゃ、つれてく」
「ッッ!!」
晴は無言で私の手をまた引っ張って歩いた
「一体どこに連れていくつもり?」
「黙っとけ」
「やだ」
「うるせえ」
「…言ってよ!!!!」
「…」
「どこにつれてくつもりなのか、何をするつもりなのか、今ここでいいなさいよ!!」
「言ったらついてきてもらえない」
「は?何それ。私を殺すつもり?…ッッ!!」
言ってしまった。
晴は一切しらないであろう兄の事件。
私がいきなりこんなこと言ったら晴は絶対怪しむ。
「…」
晴が近づいてきた
なにも語ろうとしないその表情は私をかえって不安にさせた
「な、なに。」
「…知りたいから」
…え??
私の表情をみてから晴はまた話始めた
「お前が泣いてる理由、きちんと知りたいから。俺に話して欲しい。ここなら誰もいないから」
晴の表情は男らしい、とても凛々しかった
「お兄ちゃん…」
「お兄ちゃん??」
「お兄ちゃんが好きだったから…ラーメン」
なぜか口が勝手に滑る
そして、晴の前で泣きたくないのに勝手に涙が出てくる。
「…泣いていいから。俺が今は受け止めるから。俺じゃ頼りないと思うけど、ここなら泣いていいから」
「…ングッ…」
泣いた
晴の胸の中でいつの間にか泣いていた
声が出なくなるくらい泣いた
晴の凛々しい腕が私を抱きしめた
お兄ちゃん
何年分の涙だろうか…
殺人者の息子にこんなことして、お兄ちゃんはひょっとしたら怒ってるかもしれない
それでも
それでも
晴に今は頼らせてください