そう言えば…

私はふと横にいる麻衣を見る。



『麻衣はさ、今好きな人いないの?』


高校からつきあってた彼氏と別れたのは、たしか半年前。


『…いるよ』

『うそっ!?』

私は思わず首だけ起こす。

『誰?』

『……』

麻衣はしばらく何もいわず、星空を眺めていた。

言おうか迷ってるみたいに。



『…一馬先輩…』


麻衣の口から出てたのは思いもよらない言葉で…。



でも…
一馬先輩には…



麻衣は星空を見つめたまま、

『分かってるよ、一馬先輩にはカノジョ…美樹先輩がいること。』

と小さな小さな声で言った。

『…うん』

『最初から分かってる。そもそも、私が好きになるタイプの人じゃなかったの。だから、油断してた。』

『…うん。』

『でも、気が付いたら好きになってた。自分でもびっくりするくらい。』


…わかるよ。
麻衣。


『美樹先輩がね、もっと嫌な人だったら良かったなぁ、とか思った。もっと、性格が悪くて、もっと意地悪な人だったら、奪っちゃうのにな、って。』

私も星空を見つめたまま、黙って頷いた。


『でも、美樹先輩、いい人じゃん。私、美樹先輩も大好きでさ、もうどうしようもないよ』

麻衣は明るい声で言った。


『だから、いいの。私は、一馬先輩を好きなだけで。一馬先輩を好きになって、サークルも勉強も頑張ろう、って思えたし…』

『うん…』

『だから、私は一馬先輩を好きなままでいるの』


そう言って笑った麻衣は、本当にかわいかった。