その時、


『さやえんどうは、俺の妹みたいなもんだから』


蒼太先輩の声がした。
とても静かな、
乾いた声で。


さやえんどうは俺の妹


私は心の中で復唱する。


さやえんどうは俺の妹


ははは…

やっぱり、私、蒼太先輩にオンナとして見られてなかったんだ。


隼人先輩たちは、蒼太先輩と私を見て、しーんと押し黙っている。



『ははは…、妹っていうより、おもちゃじゃないですか』


出来るだけ、
明るい声で私は言う。
頑張れ、私。
笑って、私。



隼人先輩たちは、そんな私を見て、ホッとしたように笑い出す。


『そっか、なんか勝手にいい感じだと思ってたけど、そういうんじゃないんだ』

『そんなわけないですよ』


ははは…
私は笑う。


いつの間にいたのか、隣で黙って聞いていた麻衣が、

『さて、私たち、そろそろ部屋に戻りますね。おやすみなさい。紗耶香、いこ』

と、私の背中をそっと押してくれた。



『おやすみー。』


先輩たちの声が遠ざかる。


『……っ』

こらえていた涙が、芝生の地面に音もなく落ちた。