『おはようございます』

私はそう言いながら、スタッフルームのドアを開ける。

バイト先の店では、朝はもちろん、昼でも夜でも、出勤した時にはかならず『おはようございます』という。

バイトをするのが初めてだった私は、かなり違和感を感じるけど、ルールだから仕方ない。



『おはようさん』

スタッフルームの椅子に座って、アイスコーヒーを飲んでいたのは、この店の店長。
30代前半の西岡店長は、眠そうに私を見て言う。

『お前、はよ着替えなヤバイで。杉下、もう待ってんで』


半年前に、大阪から異動してきたというこの店長は、たいていいつもスタッフルームにいる。

だるそうに椅子に座って、休憩中のスタッフにからんだり、ひどい時には漫画を読んでたりする。

でも、店がものすごく混んできたり、何かトラブルがあると、なぜかすぐにスタッフルームから出てきて、仕事を誰よりも早くこなすので、スタッフから信頼されていた。


『杉下さん、もう来てるんですか!?』

うそ…

まだ研修が始まる20分前なのに…

私は青ざめながら、
『着替えてきます!』

更衣室に入った。