『………』
「ん〜それより、穂香はそんな体でどこ行くつもりだったの?一緒に行ってあげようか?」
「…長距離走でるの」
『は?』
二人の声が綺麗に重なる。
「お前、その体で?」
「うん」
「いや〜冗談でしょ穂香ちゃん」
「本気!今年も1位取るんだから!」
「…貧血で思考おかしくなったのか?」
「正常!咲羽と七世にも断言してきたんだから!」
二人は顔を見合わせて大きなため息をつく。
「…そこまで言うなら行ってこいよ」
「そうだね〜、穂香ちゃんはやるって決めたら最後までやり抜く子だしね」
「!」
「そこまで言って1位取れなかったら大いにバカにしてやるから…頑張れよ」
「言われなくても頑張るんだから!」
『“長距離走に参加する方は、集合場所に集まってください。長距離走に…"』
放送部のアナウンスが校庭に鳴り響く。
「じゃ、無理はしないでね!いってらっしゃい」
「うん、いってきます」
よしっと意気込んで集合場所へ足を進める。
でも思い残すことがひとつ…
「…賢志!!」
近くも遠くもない場所で、賢志は振り向きもせず立ち止まる。
「ありがとね!」
賢志はそのままヒラヒラと手を振りながら観客席の方へ進んでいった。
そんな態度にむかつきながらも心は穏やかだった。
絶対にバカになんてされないんだから!