「あ、でもね、いらないのも2人一緒で…」


「いらないってだーれのことだおい」


「そんなこと言われたら寂しいなぁ」


「げっ、賢志に拓海まで!」



タイミングよくも悪くも現れたのは、短髪で目つきの悪いヤンキーみたいな永井賢志(ながいけんじ)。


もう1人はおっとりした雰囲気で細目の坂本拓海(さかもとたくみ)。



ちなみに私は賢志のことが嫌い。



すーぐつっかかってくるんだもん!




「“げっ"じゃねーよ咲羽!丸聞こえだっつーの」


「じょーだーんでーす」


「冗談なら、こう、もっとなぁ」


「当たってるじゃない、拓海はともかく賢志がいても嬉しくない」


「はぁ…!?」



横目でちらっと見ると、もともとつり目なのがさらにつり上がっていた。



「お世辞でも嬉しいって言えよ八方美人!」


「なによその言い方!あーあ今年もうるさいのが一緒かぁ」


「あーまた始まったよ穂香と賢志の痴話喧嘩…



「さりげなく“拓海はともかく"って、なんだかなぁ…」



咲羽と拓海のつぶやきももはや二人には聞こえていない。



「お前がツンケンしてうるさくさせてるんだろ!」


「ちょっと、人のせいにしないでよ馬鹿!」


「人のせいじゃなくて豚のせいだな!」


「ちょっと豚って私のこと!?私が豚なら賢志はつり目の狐ね!化け狐!」


「俺のコンプレックス…!つり目は生まれつきだ!!」


「まあまあ二人とも、今日から3年生なんだからもっと仲良く…」



『うるさいっ!!!』




玄関が一瞬静まり、また何事もなかったようにいつもの空間が流れ始める。



拓海の言葉につい反応したらハモっちゃったよ…!


もう、賢志と顔合わすと喧嘩ばっかり。


なんでつっかかってくるかな。


意地になってる私も私だけど。


心優しい奴って知ってるんだけどなぁ。


そんなこと言っても調子に乗るかまたつっかかれるだけだろうけどね。

もーう朝から最悪!


そんな中チャイムが鳴り、続いてアナウンスが流れる。



『"全校生徒は朝礼があるので体育館に集合してください。全校生徒はー…“』



「あっ!ほ、ほら朝礼だって!行こ!」



もやもやしながらも咲羽に手をひかれ体育館へと向かうのだった。