「ねぇ、覚えてる?」





唐突に、明日香が言葉を濁してきた。


東京の高層ビルの最上階の静かなフロアに、コロン、とグラスに氷が当たる音が意味深に響く。




「覚えてるって言われても、思い当たるのがありすぎるよ」



乾いた笑いをこぼす北本に、そうだ、と頷く。



なんてたって三年間、いや、それ以上の時間を俺たちは共有していたのだから。




「…七海がでた時の、ミスコン」




ポツリと呟かれた言葉によって、一気に記憶が甦る。



「あぁ~」




北本も、ももかですら「あぁ…」と苦笑いする。



それは、今でも鮮明に思い出せるものだった。






そう、俺達を繋げてる、大事な記憶だ。






俺は椅子に背を預け、暗闇に灯されたあかりを見つめる。








ーーーそうだ、正しかったかなんてわからないけれど。



俺たちはあの時、精一杯もがいていたと思う。



なぁ、七海。