「綺麗な、涙ですね」



 ルミがそう言うと、シェイラと言う人はぼんやりとしたまま。ルミは指で、その涙を拭ってやる。



「君...は......」



 空気が抜けているような、かすれた声で、そう尋ねてきたので「ルミと言います」と答えた。



 僅かにだが、シェイラの目が少しだけ大きく開く。



「ルミ...............本当、に?」



 半信半疑なのだろうか。そう問いかけてきたシェイラへ、エンマが『そうでございます、ルミ様です』と声をあげた。



 するとまたもや、シェイラが泣き始める。



 先程とは比にならないくらい、次々と涙が溢れ出る。



『ルミ様が、帰ってこられたのです
シェイラ様の為に!
ですからどうか、生きてください!
死にたいなどと言わないでください
お願い致します!』



 エンマは、涙するシェイラを必死に説得しようとしているようだ。その内容に些か疑問点が残るが、目の前の人が死のうとしているのであれば、それを止めないわけにはいかない。



「...死にたいと、考えているの?この人は」



 エンマの方を向き、ボソボソと聞く。
 コクコクと頭を上下に振り、その通りだと懸命に訴えてる様子から、どうやら本当のようだ。



 改めて、横たわる涙に濡れたその人を見る。



 何故だか無性に、死んで欲しくないと思った。今日、初めて出会った、お互いのことを何も知らないような人の為に、生きて欲しいと強く願う。



「私からも、お願いします
貴方のこと良く知らないし、死にたいって言うその理由もわからないけど...
でも、私は貴方に生きて欲しい
シェイラさんに、生きて欲しいと思ってます」



 少しだけ先程より強くしっかり、シェイラの手を握る、ルミの思いが届くように。



 シェイラの、まだ涙に濡れたその黄金色に瞳は、もう一度ルミを捉える。



「僕は......生きてて、いいのかな」



 不安そうに彼のその瞳は揺れる。
 もしかしたら、それを望まれないで生きたのかもしれない。だからたった一つ、その答えが欲しい、と望むのだ。私と同じように。






 でも、だったら。