「もういいでしょ。ごはん、食べに行こっ!」

高清水さんは栗林さんの腕をとって、ビルを飛び出していった。

私もビルを出て駅方面へ歩き出そうとしたとき、向かいから北野さんがカバンを持ってやってきた。

立ち止まると、北野さんもビルの前で立ち止まった。

「あら、まだ、いたんだ」

「北野さん」

「ちょっと、道草を」

「そう。麻衣ちゃんたちとすれ違ったけど。しかし、麻衣ちゃんもやるわね」

「えっ」

「資料届けさせるのを頼んだの、麻衣ちゃんよ」

「えっ」

「やりにくいだろうって思ってわざと」

「そう、だったんですか」

「まあ、わたしも同じように部長に頼んでたんだけど」

北野さんは照れくさそうに頬にかかる髪の毛を耳にかけた。

「高砂ちゃんの耳に届かないように気をつけて」