「最初は取引先の会社に勤めていたから、その経験をひけらかして先輩風吹かせながら調子に乗って仕事をすると思ってたんです。でも違った。ウチの会社の仕事の流れをくんで仕事してくれてありがたいと思ってました。この先もいろいろあるかもしれないけど、それでも仕事をしやすいと思ったことは初めてでした」

高清水さんは少し恥ずかしそうに顔を赤らめている。

「……あたしの知らない栗林さんを知ってるから嫌だっただけです」

目をそらしながら高清水さんは言い続けた。

「まだ認めたわけじゃないですから」

「はい、わかってます」

「仕事やりにくくなると思いますけど」

「これからもご指導よろしくお願いします」

軽く頭を下げると、高清水さんは小さく笑ってくれた。

「麻衣」

ビルの自動ドアが開き、栗林さんがスーツ姿で現れた。

「なんだ、森園いたのかよ。こんなとこでもお忍びか?」

「違いますって」

不思議そうに栗林さんは私と高清水さんを交互に見ている。

「栗林さんの情報あったら、教えてくださいよ」

「はい。了解しました」

「何? オレの情報がどうかした?」