「で、その誘いに乗ろうとしたんですか?」

こくんと軽くうなずいた。

所長は私の両肩を両手でつかみ、小さく揺さぶった。

「どうしてそんな危険なこと、しようと思ったんですか。苦しめたいんですか。そんなに自分を」

「そんなことは。私、所長のために利益になる情報を聞き出そうとして。そうしたら所長に私から……」

所長はニコリと笑い、私の唇に人差し指をおしつけた。

「今、所長って言ったでしょう。告白はあとにしましょうか」

私の両腕を両手で持ちあげると、立ちあがらせてくれた。

「むつみさん、今日は残業してもらいますよ」

「え、だって、もう」

「ここからはむつみさんに僕と仕事してもらいます」

「何、いってるんですか」

「ちゃんと報酬は差し上げますよ。仕事済ませてきますので、むつみさんは帰宅してください。ひとつ、注文してもいいですか?」

久々に見せる不適な笑みに心も体もその姿に震えてしまう。