「お礼って何よ。何にもしてないし。むしろ、大変なんだけど」

「あー、わかった。わかった。そんなむつみだろうと思って、いい話があるんだ」

いい話だなんて、大和から聞いたことはない。

どうせくだらない話なんだろう。

「紹介したい人がいるんだ」

「紹介したい人?」

「俺の知り合いにむつみのこと話したんだよ。そうしたら、えらく気にいってくれたみたいでさ」

いきいきとしたまっすぐぶつける声につきあっていた時も、仕事帰りに会社で起こった理不尽なことだったり、営業成績があがったことを話しあったことを思い返した。

「むつみが派遣にいるっていうのも心配してたよ。協力できないか、って言ってくれてさ。一緒に来てくれないかな」

「ちょっと待ってよ。大和、付き合ってる人いるんでしょ」

「もういいんだよ。あんなヤツ。オレはおまえが必要なんだ」

大和は声を震わせ、弱々しく嘆いているのがスマホから伝わってきて、胸が痛い。

「……大和」

「オレの言うこと聞いてくれるよね」