「それじゃ、またな」

「……ありがとうございました」

「礼を言うのは五十嵐に言え」

夕空が広がっていた。本社勤務の人たちにまぎれ、バスに乗る。

駅につき、バスから電車に乗り、営業所まで急ぐ。

営業所はまだ明かりがついていて、事務室のドアを開けるのをためらった。

「ただいま戻りました」

「おかえりなさい」

所長がひとり、机にたくさんの資料を並べ、事務作業を行っていた。

「高清水さんは」

「今日は用事があるという話でもう帰りましたよ」

「そうですか……」

まずい。所長とふたりっきりだ。

机に載った書類を適当に引き出しにしまい、出て行こうとした。

「お先に失礼します」

「むつみさん、待って」