「今から、ですか?」

「そう。営業資料なの。急ぎで」

「わかりました」

電話を静かに切る。

高清水さんは大きく溜め息をつきながら、キーボードを強めに叩いている。

「高清水さん、机の上の書類を本社に届けてほしいそうなんですが」

「北野さんの頼みでしょう。じゃあ、行ってきてください」

「わかりました」

封筒を取り、自分のカバンに詰める。

小さい声で行ってきますと高清水さんに言い、事務室のドアを開けた。

「さっきはいい過ぎました。ごめんなさい」

高清水さんは悔しそうな顔をして私を見送ってくれた。

外に飛び出すと、日はまだ高く、額や首に汗が流れる。

駅構内に入っても人の多さで熱がこもり、待っているだけでもバテそうになる。

電車に乗り込み、肌の汗が引く頃に駅に到着する。

本社への最寄りのバスに乗り換えて本社へ着く。

警備のおじさんに事情を説明し、本社3階へ行く。

ワンフロアーに総務部と営業部が肩を並べるように机を並べていた。

入口付近にある受付には、高砂さんが待っていた。