説明を聞いて、夏依ちゃんの顔が一気にシュンッとなった。
「つまり…差し歯って事ですか…?」
「…うん、言い方は悪いけど…一応、そういう事に」
ショックを受けたらしく、夏依ちゃんは泣き出した。
こうやって女の子を泣かせてしまう事もある。
歯科医は心苦しいお仕事だ。
タオルで丁寧に、涙を拭ってあげた。まつ毛が抜けないように。
「先生は……優しいですね…」
「え、そう?」
「はい…。ずっと前に通ってた所の先生は…すごく、怖くて…痛がっても、止めてくれなくて」
そういう先生も、たまにいる。
痛がっても止めずに続行。
患者さんの気持ちなんてそっちのけ。