「あの学校の近くには、アマチュアのボクシングジムがあるんだよ。そこで黒木は練習してるんだ。
……それと黒木本人から聞いたんだが、奴の一つ下で沼津(ぬまづ)というのが強いらしいんだ。確かライト級(六十キロ以下)だって言ってたな」

「えーっ、マジッスか! 俺と同じ階級じゃないですか」

 説明している飯島の後ろから、着替えを終えた相沢が悲鳴に近い声を挙げた。彼も二年生だ。


 石山は笑いながらフォローした。

「安心しろ。俺も黒木から聞いていたんだが、沼津は強いがアホな奴らしいぞ」

「石山、そりゃ安心出来ねぇだろ。アホ対決じゃ相沢も負けてねぇと思うぜ」

「兵藤先輩ひでぇッスね! 俺が人間的にアホになったのは、スパーリングで三人の先輩に殴られたせいッスよ」

 相沢は笑いをとっていたが、四人の一年生達は笑っていいのか迷っていた。


 ひとしきりの笑いが終わった頃、梅田が口を開く。

「一・二年生が全員揃っているから丁度いいな! 三年生も国体で引退だし、新たなキャプテンを発表する」