「おいおい、一年生が不安がる事は言うなよ」

 飯島が苦笑しながら口を挟む。


「先生! こいつらに現実を教えて腹を決めさせた方がいいですよ。……実際にスパーリングやって辞める奴も少なくないんですから」

 兵藤も石山に同調した。


「ボクシングはスポーツだが、実際は殴り合いの危険な競技だ! 俺は辞めたい奴を止める気もないからな。……二年にはライトスパー形式で相手をさせるから、まぁ何とかなるだろう」

「ライトスパーって何ですか?」

 梅田の話に健太が質問をした。


「文字通り軽めのスパーリングさ! 六分目位のパンチで打つし、クリーンヒット(直撃)しても追撃をしないルールでやるんだよ」

 梅田の代わりに石山が説明した。


「六分目のパンチと言っても食らうと痛えぞぉ。……それに二年の奴らにも感情があるからさぁ。あいつらにパンチが当たったら、六分目じゃなくて八分目以上の仕返しがくるだろうな。気を付けろよ!」

 兵藤は人の悪い笑顔になっていた。