勢いよく立ち上がった真緒に母親が釘を刺す。

「真緒、あなた電話を使い過ぎなんだから少しは控えなさい。料金次第では小遣いを減らすわよ」

 康平の二つ年下の真緒は中学二年なのだが、夏休みの前頃から頻繁に電話をするようになっていた。

「えー、母さんあんまりだよぉ。中学生は中学生なりの人間関係があるんだからね」

 真緒はふてくされたような顔をして、ペタンと座布団に座り込んだ。

 その時、居間から出た所にある電話から音が鳴った。

「友達かも知れないから私が出るよ。……向こうからの電話だったら問題ないでしょ」

 再び勢いよく立ち上がった真緒は、跳ねるような歩き方で居間を出ていった。


 しばらくすると、真緒はニヤニヤしながら居間の襖を開けている。

「兄貴ぃ、山口さんて女の人からデ・ン・ワ! 頑張ってね」

「な、何を頑張るんだよ。……学校の用事だけかも知んねぇだろ! あ、テレビのボリュームは下げなくていいからな」