なんとか高城先生に承諾を得て、宗佑に先生の家を教えてもらった。
『住所だけ?なんか目印とかないの?』
『目印っていうか、部長の家目立つからすぐ分かるよ。立派な純和風の平屋で、門に高城って表札に書いてあるから』
そして、当直明けの日曜日。
午前中に買い物をし先生のもとへ。
宗佑の言っていた通り、住所を辿って来てみたらすぐに分かった。
本当に立派な門構えで、インターホンを押す手がつい震えてしまう。
『……本当に来たんだな』
モニター越しに部長の呆れた声がして、私は手に提げたスーパーの買い物袋を上げてにっこり笑顔で「はい」と答えた。
「うわー、本当に冷蔵庫の中お酒しかない……」
日本酒、ウイスキー、ワインがところ狭しと冷蔵庫に入っていた。
そしてちょっとの隙間に入った、つまみらしきもの。
私の呟きが聞こえたのか、後ろから高城先生が弁解した。
「外食がメインなんだよ」
「だからってこれはひどいですよ」
「あのな、男の一人暮らしなんてこんなもんだ」
「そうですか、じゃ今度から定期的にご飯作りに来ましょうね」
うふふと微笑みながらそう言うと、先生は困ったように苦々しく笑った。
「勘弁してくれよ。まったく、前にも言ったけど、俺にかまけている暇があるなら婚活でもしなさいよ。本当に行き遅れるぞ」
「先生の御心配には及びません。私結構モテますから」
「あぁ、そうかい」
ちょっと見栄を張るとふっと鼻で笑われ、早々に台所から退散していった。
「色々キッチン用品借りますよー」
居間にいるであろう先生にそう声をかけると、投げやりな返答が返ってきた。
「もうどうぞご勝手に」
いそいそと買ってきた食材をスーパーの袋から出していく。
ちょっと奥さん気分を味わえて嬉しくなってしまう。